2017年11月15日~17日に幕張メッセで開催された国際放送機器展「Inter BEE 2017」。その一角にあるプレゼンテーションスペースにて、弊社テクニカルディレクターの遠山がLiVE CM(ライブCM)についての講演を行った。遠山は細部にまで気をつかった丁寧なディレクションと、思わず話かけたくなってしまう優しいオーラから気難しいエンジニアたちの支持も厚い。本稿では遠山の講演概要とともに、LiVE CM実現まで舞台裏をご紹介いたします。
テレビのリーチパワーは健在である
スマートフォンやネットメディア興隆の昨今、この会場に足を運んでいらっしゃる方はきっと「テレビ」というメディアにまだ何かしらの可能性を感じている方々ほとんどなのではないでしょうか。私たちHAROiDも同じ想いです。
テレビが全世帯に普及していたと仮定して、そのうちたった1%だけでも約57万世帯にリーチができるメディアがテレビなのです。テレビのリーチパワーに、デジタルを掛け合わせることでいまだかつてない施策を成功させることができましました。それが「LiVE CM/O2O2O」です。
視聴者参加型 LiVE CM /O2O2Oとは?
私たちは放送局と体制を組んで、スマートフォンで参加できる視聴者参加型CM(=LiVE CM)を放送しました。CMが始まったら特設のスマートフォンサイトにアクセスし、タップやスワイプ、振ったりすると、そのアクションに応じてCMの中の演出がリアルタイムに変化していきます。キリンビール株式会社様と一緒にすでに7回実施しており、1回につき、参加者数十万・数百万タップを達成しています。
次に、私たちはコンビニと体制を組んで、LiVE CMでオンラインに来た視聴者にクーポンを配布し、店頭へと誘導する仕組みを構築しました。それがO2O2O(Onair to Online to Offline)です。実際にクーポンを受け取った視聴者のうち約8割を店頭送客に成功しています。
LiVE CM/O2O2Oの効果をまとめると以下のようになります。
- エンドユーザー:クーポンのお得感、全国民が参加する楽しいイベント体験
- 広告主:ブランド好感度リフトアップ、サンプリング機会の創出
- 流通・コンビニ:クロスセル、集客効果
LiVE CM実現の肝は運用にアリ
簡単にLiVE CM/O2O2Oのご説明させていただきましたが、この施策を実現するにあたり、最も重要なのは「裏方力」です。放送局や流通、クライアントとの調整はもちろんのこと。ユーザー体験を損なわずに、瞬間的な大量のアクセスをどう捌くか考え、わずか60秒の施策ではありますが、入念な準備をしなければなりません。
たとえば、アクセス数の予想。
過去の参加者データや番組の視聴率をベースに、どの程度の負荷がくるかを予想してインフラの準備をする必要があります。事前の見積もりが甘すぎると、最悪の場合システムが止まってしまします。逆に見積もりが多すぎると、従量課金制のインフラを用いているため、必要以上に費用がかかってしまうことも・・・。絶妙な塩梅を見極めるのも私の大事な仕事なのです。
テストも入念に実施しています。
「数万のユーザが一気にやってくる」という状態を擬似的に発生させるシステムを自社開発し(通称:千手観音)、負荷テストを行います。テック領域のメンバー以外にも手伝ってもらうので、このあたりから社内が文化祭の前日のような状態になります。バグが出るとどんよりし、バグが出ないならテストに不備があるんじゃないかと、不安になりながら繰り返し繰り返しテストを行います。
余談ですが、リハーサルや本番の詰め所は、高確率で差し入れのおやつや軽食があります。社長が大量のカツサンドを買ってきた時、なぜか副社長も全く同じカツサンドを買ってきて、差し入れ調整の段取りが悪いとみんなから文句を言われていたことがありました(笑)
LiVE CMの触れ込みに「視聴者がお祭りに参加できる感じのCM」というフレーズがありますが、会社も一種のお祭り状態になります。
テストとは別に当日の流れを何回も練習します。たくさん人数を集めてやると想定しなかった不具合が見つかったりするので、直前まで気が抜けません。
「本番」の放送が終了しても気を抜くことはできません。すぐにレポート作成の準備にとりかかります。ゲームだけしか参加しなかった人数、クーポン交換までしてくれた人数など詳細なデータがわかります。
HAROiDが提供する「テレビログイン」をしているテレビ端末から取得できる「視聴ログ」と組み合わせた集計も可能です。
HAROiDチームはLiVE CMの実現にあたり、こうした煩雑な裏方仕事を阿吽の呼吸でこなすことができます。企画力やクリエイティブの力はもちろんのこと、裏の仕組みや運用力がHAROiDの真の強みだと私は考えています。
ご静聴ありがとうございました。
(構成/石塚健朗)